氷河戦士ガイスラッガー


1977年に放送されていた「氷河戦士ガイスラッガー」です。

絵柄からわかる通り、石ノ森章太郎先生の作品なんですが、かなりマイナーな部類で、懐かしアニメとして取り上げられることもなく、マニア以外だときっと当時子供だった方しか知らないんじゃないかと・・。話数もかなり少なく、なんと全20話しかありませんでした。調べると、視聴率が悪かったのと、おもちゃが売れなかったため途中で打ち切りになったとのことです。当時の事情としては、上の年齢を意識しすぎて凝りすぎた内容にした結果、結局子供からは人気が出ず打ち切り・・というのが一番あるあるなんですが、普通に子供向けの番組打ち切りっていうこともあったんですね。この頃のアニメは大体が全25話前後か全50話前後のパターンが多いのですが、ガイスラッガーはもともとどっちになる予定だったんでしょうか。さすがに50話からの20話は差が大きすぎる気がするので、きっと25話前後の予定だったんじゃないかと思います。
このアニメについては、長年主題歌とその映像のみしか知らなかったのですが、10年以上前にスカパー(東映チャンネル)で放送されて、その時の録画を持っていたので今回見てみることにしました。その放送がされていた時も録画するだけで一切見ることはなく、本当に今回が初めての視聴です。というのも、この絵柄の雰囲気、OPやEDの映像を見ても正直言ってあまり良い印象がなく、「見たい」と思えなかったんですよね・・。

その理由について詳しくは下で語りますが、なんだか絵柄が古臭いしOPで戦っているシーンが出てくるけど、それもなんだかダサい・・。OPはいかにも「とりあえず王道な感じにしてみましたよ感」満載、そしてEDは教育テレビの子供番組のテーマ曲みたいだし、SFものがだんだんリアルになってきていた1977年にしてはえらく古臭いな、野暮ったいなという印象しかありませんでした。でも、全20話しかないことだしパッと気軽に見れていいかな、たまたま気が向いたので見てみることにしました。そんな感じで期待せずに見はじめたのに、じっくり見てみた意外と面白く、ほんの数日であっという間に見終わってしまいました。どれだけ集中して見たかというと、その頃行った眼科(コンタクト愛用者のため半年に一度定期健診に通っているのです)で「目が乾いていますね」と指摘された程(笑)。その眼科も10年以上通っているけど、そんなことを言われたのは初めてでしたよ。そのくらい真剣に一気見してしまいました。

一般的にはマイナーで、放送当時も全然ヒットしなかったのに、超少数派の個人的ツボに刺さりハマってしまう・・たまにこういう「当たり」が隠れているので昭和のアニメ鑑賞はやめられません(笑)。そんなわけで、とても面白かったので感想を語りたいと思います。


★良かったところ★

・声優さんの意外性
このアニメの主人公は、絵柄を見れば一目瞭然。サイボーグ009に激似の赤いコスチュームの「シキ ケン」です。声は古谷徹さんなんですが、これはまぁよくあるパターンでいつものお馴染みの感じだと思います。意外だったのが、サイボーグ007に激似の青いコスチュームのスキンヘッド、「ミト カヤ」の声を神谷明さんがやっているということです。当時の神谷明さんといえば、主役が当たり前。むしろ、主役以外をやることがあったのか?と思えるほど主役ばっかりでした。脇役といえばドカベンとかハーロックがあったなぁ。それ以外で主役以外をやるとしたらイケメンゲストキャラか少女アニメのイケメンキャラ。どっちにしろとりあえず2枚目のイケメンキャラでお馴染みだったと思います。ところが、このカヤはイケメンキャラではない上、2番手といえば2番手だけど、ひねくれキャラで「俺は認めねぇぜ」「俺は行かねぇぜ」みたいに、あえて周りと反対の発言をしてはチームワークを乱し、よくみんなと言い合いになっていました。80年代になっても、主役でヒーローが多かった神谷さんが、それ以上に主役全盛だった70年代にこういう役をされていたとは、貴重だし意外性があってとても良かったです。特に70年代のヒーローアニメ主人公のキャラクターはどれも同じような雰囲気だったので、カヤのキャラクターは新鮮でした。それにしても、古谷さんと神谷さんの共演自体、当時からあまりなかったのでは?どちらかが主役をやってるアニメのゲストキャラとかなら度々あったのかもしれない。そういえば90年代だけどセーラームーンスーパーズの時は共演していたなぁ。それ以外だとあえて言えば思いつくのは「コナン」くらいかな・・でもあれも途中で神谷さんが降板してるから、共演はしてないかもしれないし・・。そういう意味でもとても貴重だと思いました。
その他にも、同じガイスラッガーの「ジェイソン似・ほとんどロボット状態」の「オノ リキ」を若本規夫さんがやっていて、これも結構ビックリでした。リキは他のメンバーと比べて、なぜか一人だけメカメカしい出で立ち。おまけにジェイソンのように口もなく顔の表情も変わらないのできっとやりにくいんじゃないかと思いましたが、ちゃんと怒っていたり笑っていたりという表情が見えてくるのがすごかったです。しかも、声と喋り方だけでイケメン感が出るのがスゴイ・・(むしろ、このことが一番スゴイと思ったかも・・)。そんなリキのサイバノイドに改造される前の姿がEDで見ることができますが、あの声とキャラからは想像できない程「西川大作」「剛大次郎」な雰囲気でちょっと拍子抜けでした(笑)。顔とキャラが全然合ってないんですけど、あれはもう少し考えてほしかったなぁ・・。

・明るい雰囲気だけど意外とハードな内容
ガイスラッガーのメンバーは5人とも明るい性格なので、物語の流れ全体的に明るくて良かったです。5人とも改造されまくっているのに、そのことに関する悲壮感はあまりなく、悩んでいる様子もほぼなかったと思います。ケンなんかも、見た目のイメージで009ぽい陰のあるキャラを勝手に連想していたら、サッパリしていて明るいお兄ちゃんだったのが良かったと思います。009のようなジゴロ的要素も一切なかったですし(笑)。いや、あれはあれで009には欠かせない要素なんですけどね。そして、スキンヘッドのひねくれカヤも、なんだかんだで素直になれないだけのナイスガイ。リキは見た目からは想像できないイケメンキャラ。紅一点のマリはあまり「オテンバ」な要素はなく、どちらかといえば大人びたタイプのヒロイン。タロは子供キャラのはずなのに、志岐博士の息子・ヒロシが子供ならではの足手まといキャラを担っていたので、空気読みまくりの賢く落ち着いたキャラでした。ここはもう少し子供だからやっちまった的エピソードがもう少し欲しかったところ。でも一回何かのエピソードで暴走してケンに殴られてたなぁ。
こんな感じの5人ですが、5人が一番悲しんでいたのは、自分たちが眠りについている間に祖国が絶滅してしまったことについてでした。ガイスラッガーにとっての祖国は地球の氷河期以前の、3万年前に存在した「ソロン王国」で、それがなくなってしまった「現代」の地球は彼らにとって関係ないといえば関係ないのに、なぜ命をかけて戦わなくてはいけないのか?自分たちは何のために戦っているのか?というのがちょいちょい語られる問題点・疑問点でした。それでも、「もともとソロン国は地球にあったんだからこれからは地球が自分たちの祖国。滅ぼされた祖国の仇であるインベム星人を倒そうじゃないか!」というのが5人が自分達の存在価値・メンタルを保活力源になっていたと思います。そのことについて、仲間内での自問自答的なやり取りは毎回のようにあったので、そこがちょっと胸を打たれる場面だったと思います。おまけに、自己犠牲を払って戦っているのに、地球側は彼らにそこまで感謝する様子もなく、「今の地球人が持っていない優れた科学力があるんだから、それを利用して地球を守ってくれよ。頼むよ」程度にしか考えておらず、そこが見ていてモヤっとする所でした。パッと見の雰囲気は普通の「子供向けテレビマンガ」というイメージですが、こういう苦悩を一貫して描くところはやっぱり1977年のアニメなんだなぁと思ったりしました。

・ソロン攻撃が良い
「ソロン攻撃」とは、5人が乗っている飛行メカ「ソロン号」を使っての必殺技(?)で、先端のドリルを回転させて敵艦に突っ込んでいく、簡単に言えば「体当たり」です。最初見た時は「何だよ、単なる体当たりじゃん。無茶苦茶だなぁ・・雑だなぁ・・」とツッコミまくりでしたが見ているうちになんだかカッコよく見えてきて、いつの間にか「ソロン攻撃」を楽しみに待っている自分がいました。攻撃開始の前、全員で声を合わせて「ソ・ロ~ン」というのもいいし、体当たりの後、その攻撃で開いた穴から5人が艦外に出て行って戦うのもイイ。これが毎回クライマックスのルーティンになっていました。この雑と思われる戦い方も、異常なほどシンプルで武器の少ないメカも、最終回でその理由が全てわかるんですよね。これはちょっと痺れました。

・トラウマ最終回だけど、なんかイイ
最終回については、どこで読んだのかわからないけど薄っすらと知っていました。まさかのバッドエンドなんですよね。なので、最初からそのつもりで見ていたんですが、それでも見終わった後しばらく悶々として2~3日くらい引き摺りましたよ(笑)。

最終回については簡単に語るとこのような感じ。志岐博士の息子・ヒロシの誕生日を祝うガイスラッガー達。ヒロシに「これからもずっと傍にいてね」と言われ、なぜか寂しげな5人。ここでガイスラッガーには時間が残されていないことがわかります。ガイスラッガーからのプレゼントは腕時計。「6時になったらある仕掛けが作動するから楽しみにしていてね」と言われ喜ぶヒロシ。今回はついに最終決戦。ここで先にサイバノイド犬、ジロが攻撃に巻き込まれて死んでしまいます。それを見たガイスラッガー達も覚悟を決めます。ケンはソロン号の中から志岐博士・玲子・ヒロシに別れを告げます。そしてここでケンからの衝撃の事実が。「我々とソロン号はインベムへの特攻のためにソロン国が作り上げたものです。その使命を果たしに行くんです。」悲しむヒロシたちですが、そこで、例のプレゼントの時計が作動。そこにはジロを含むガイスラッガー達の映像が写し出されました。ヒロシは「必ずガイスラッガーはここに戻ってくると信じてる」と宣言します。ガイスラッガーは最後のソロン攻撃を開始。ソロン号が炎になりインベムへ特攻していくところで終わり。

省略しまくってますがこんな感じで、この後ガイスラッガーがどうなったのか、インベム星人を倒せたのかどうかも不明のまま終了したのです。ガイスラッガーについてはソロン号が炎になった時点でもうアウトだったんじゃないでしょうか(T_T)
ジロが死ぬシーン(チョークで「がんばれ」と書いたところ)、ヒロシの時計のシーンでは目頭がアツくなりました。それまでのノンキな日常シーンが思い出されて辛かったです。それから、ソロン号があれだけ地味で簡素な作りだったのも、もともと最初から特攻用のメカだったからあえてそのような作りだったことと、ガイスラッガーも特攻要員最初からそのつもりっていたことを何の伏線もなく、最終回で突然明らかになったあたりが衝撃的でした。ショックだったけど、でもなんかスゴイ!!とりあえずこの最終回には痺れました。でも、子供の頃にこのラストを見せられたらちょっとトラウマになってしまうかもしれませんね。でも、思えば鉄腕アトム(初代アニメ版)とかもこんな感じだったな・・。私が子供の頃「懐かしのアニメ特番」とかで悲しい最終回の一つとしてよく紹介されていました。
それにしても、非協力的で無関心に見えた地球が、実は密かに戦力をアップさせていて、ガイスラッガーと一緒に戦ったのは良かったです。これも地球側の意識が変わっていく様子が描かれていたわけでもなく、かなり唐突でサプライズ的な感じでしたが・・。でも「地球はもう僕達がいなくても大丈夫です」と、ケン達が太鼓判を押すところが見れただけでも救われた感じがします。


★気になったところ★

・キャラデザが古臭い
この上の画像は近年発売されたDVD用のジャケットなので、そこまで古臭さは感じないのですが、実際の映像や当時のレコードジャケット等をみると、当時にしても古臭いと思いました。なんていうか、昭和40年代初頭の雰囲気なんですよね。原作の初期~中期の009がまさにこんな感じの絵柄だったと思います。ソロン攻撃の時の戦闘スタイル(鎧みたいな宇宙服+ヘルメット姿)も、ソフビ感丸出しであまりカッコよくないし・・。

そもそも、ガイスラッガーのキャラはなんで009に似せてあるんでしょうか。009に何らかの事情があってアニメ化できそうにないから、ここで似たキャラを使おうというならわかるけど、ガイスラッガーの2年後には本家本元の009がアニメ化されてるんですよね。79年に放送開始ということは、ガイスラッガーが制作開始されつつあった頃にはきっと009アニメ化の話題だって出ていたはず(実際のところどうだかわからないけど)。それならこちらはあえて違う感じの絵柄にした方がもっと個性が出て良かったんじゃないかと思います。

・キャラがカッコよくない
まぁ上と同じようなことなんですけど・・。ガイスラッガーの中で普通にカッコいいと言える顔立ちは主人公のケンだけで、ヒロインのマリも普通に可愛いと思う。子供キャラのタロもこんなもんだろうという感じで、特に何とも思わなかったけど、カヤとリキはちょっと酷くありませんか?現在のアニメのように美形揃いがいいとは思わないけど、もう少し見栄え良くしてほしかったかな・・と。特にカヤがサイボーグ007に似ているということはこの際置いておいて、それよりも2023年現在の私の目にはどうしても「バイきんぐ・小峠」にしか見えませんでした。もし今後ガイスラッガーが実写とか舞台になるとしたら(絶対ならないだろうけど)小峠さん適役だと思っています。そのくらい似てると思えて、彼が出るシーンは小峠さんの顔がチラついて集中できない時がよくありました。小峠さんに罪はないし、こう言っちゃなんだけど何でカヤをつるっぱげにしたんだろうと不思議でなりません。あの顔はそのままでもちょっと髪の毛をプラスするだけで全然違ったイメージになるのに・・。そうすればカイ・シデンみたいな雰囲気になってもっとファンが付いたかもしれないと思うともったいないと思いますカヤは皮肉っぽくて冷めたところがありもしかしたら改造される時も「髪の毛なんか戦う上で必要ないから、なくてもかまわねぇよ」みたいな感じであの状態になったのではと想像してみたりしましたが、何かの話でカヤまだ改造される前に家族で幸せに暮らしていた という過去の回想シーンが出てきたけど、そこに描かれていたカヤは既につるっぱげ状態でした。なんだ、ハゲは元からだったのかちょっと残念な気がしました。どうでもいいことなんですけど。
リキについても上で語った通り、一人だけメカメカしすぎるんですが、もしカヤの見た目がもう少し派手であればバランス的にもリキはこれでいいと思います。ただ、EDに出てくる過去の姿!これが声とキャラに合ってなくて、もう少しカッコいい見た目にしてれば良かったのにと思いました。巨漢=デブ に拘らなくてイイと思うし、ぽっちゃり系でもバラタックのディッキーとかサムライトルーパーのショウとかイケメン寄りの巨漢キャラも探せば結構いますよね。
こんなことをいろいろ考えていて、いっそのことバラタックのキャラデザインで、内容がこれだったらもっと人気が出たんじゃないかという結論に達しました。それで全体的に作画が良くてたまに神作画があればいうことないと思いますよ。

・ソロン号が地味
ヒーローアニメや特撮番組がてんこ盛りだった70年代後半、いくら子供の数が多かったとはいえライバルが多すぎて今とは違う意味でおもちゃを売るのが大変だったんじゃないかと思います。そんな中でもソロン号は、番組の主要メカがこれ一台というのも少なすぎだし、合体したりすることもなく、サイドの部分がスライドしてちょっとだけ地味に変形するだけ。これじゃ他のメカ物おもちゃに勝つのは確かに難しいだろうなと思いました。私でもきっと同じ合金製のおもちゃを買ってもらうなら「ボルテスV」とか「ダンガードA」を買ってもらいますよ。あれもこれもは買ってもらえない中、貴重な一個を選ぶとしたら、やっぱりもうちょっと派手なのが欲しい。とはいえ、ソロン号は簡素であり「それしかない」ところが重要なポイントなんですよねぇ・・。

・サイバノイドになったきっかが謎
もともと、なぜケン達がサイバノイドになったのか とか、他の4人は人間の見た目なのに、なぜリキだけがロボットみたいになっているのか とか過去に触れられることはありませんでした。5人が祖国祖国と言いつつも、祖国はどれだけ優れていたのか、どんな生活を送っていたのか、とかもあまり触れられていなくて(唯一マリだけがちょっとしたエピソードがあったけど)そのあたりをもう少し掘り下げて欲しかったと思います。



なんだかキャラの見た目の悪口に終始してしまってる気がしますが(^^;)、そこは本当にもう少しどうにかしてほしかった・・。とりあえず009のイメージから離れれば良かったのにとずっと思っていました。それ以外はとても面白かったです。何といってもやっぱり最終回ですね。全20話しかなくて見やすいので、昭和のヒーローアニメが好きだけど、何となくこれは・・という気がして見ていない、という方にぜひ見ていただきたいです。


2023年10月24日 記